公開年月日:2016年06月10日
辛いけどカード業界では非常に重要な「督促」という仕事
私が以前営業部署に配属されたときに、「督促」という業務を経験しました。
督促とは、辞書をひくと「約束の履行 (りこう) や物事の実行をうながすこと。せきたてること。」などと書かれていますが、要するに「金払え」ですよ。
仕事とはいえ、怒鳴られるのはツライもの。クレーム対応の達人が神経をすり減らした経験から得た、自分の心の守り方と、客の怒りを鎮める法を伝授。
督促をしなければ業績が下がる
なぜ督促が必要か。お金を期限までに返済しない人達がいるからです。
クレジットカード会社で督促の対象となる人の多くは借金を抱えた多重債務者。精神的にも追い込まれて、やばい感じになっている人も多そうです。
引用元の記事にも督促部署に配属された人が10kg痩せたなどということが書かれています。本来なら、負い目を感じて平謝りして欲しいところですが(そういう人もいるでしょうけど)、逆ギレして、罵詈雑言を浴びせてくる人もいるんですね。
私の経験でいえば、感情的にキレキレの人よりも悪質なのが泣き落とし系の人です。例えば督促対象のA社に電話したところ、こんなことをいわれたことがあります。
「実はB社からの入金が遅れているんです。そこが支払ってくれればうちはすぐに支払うのに、まったく困ったものですよ。そんなわけでもう少し支払いを待ってもらえませんか。」
物腰は丁寧だし、可哀想だから待ってあげようかなどと最初は思っていましたが、営業畑一筋の当時の上司からそれは違うと諭されました。
A社とB社の利害関係はこちらにはなんの関係もなく、そこに巻き込まれてはいけないというのです。確かにその通り。
その点に注意して話を聞いていると、督促のときに限らず、巧妙に話をすり替えてくる人が(話している本人もわかっていない場合も含めて)案外多いと気付くようになりました。
前職では数千社を超える顧客を抱えていました。それだけの利用者がいると支払いの滞る人も多くいて、業績にも大きく影響してくるため、見過ごせない問題でした。
クレジットカード会社となれば、なおのことでしょう。
修羅場で役立った私のクレーム対応術
重要な業務とはいえ、督促は本当に辛い仕事です。もしも皆さんがそんな部署に配属されたときのために私のクレーム対応術を伝授しましょう!クレーム処理全般に役立つノウハウなので知っておいて損はないはずですよ。
私が社会人になりたての頃に、当時の上司がクレーム処理の秘訣を教えてくれました。「無抵抗」がその極意です。
怒り心頭で我を忘れて怒りまくる人は、まともに話を聞き入れません。こちらが何かを話せば、そこに絡んで感情を爆発させます。まるでこちらの言葉を怒りの燃料にしているかのようです。
なぜ私がこのように臨場感たっぷりに語れるかというと、前職のときに修羅場を経験したからです。
提供しているサービスにトラブルが発生し、数千人の顧客がサービスを利用できなくなってしまいました。クレームの電話は4時間ほど鳴り続けました。
そのときに過去に上司から聞いたノウハウを思い出しました。地獄で仏の心境です。
私が徹底したのは怒ったお客さんの話を「聞くだけ」ということ。「サービスが止まった間の損害を保証しろ」「商売上がったりだ、ふざけるな」など、怒りの波動がビシビシ伝わってきます。
中には見当違いなことをいう人もいるのですが、そんなときに「いえ、それは違います。そうではなくて…」などと反論をしようものなら、その言葉が火に油を注いでしまいます。
今風にいえば、マッド・マックス怒りのデスロードです。白塗りの無法者たちがエレキギターをかき鳴らしながら突進してくるかの如しですよ。
正しい対応は、とにかく謝る。間違った言動には同意してはいけませんが、反論はしません。ひたすら申し訳ありませんの繰り返し。
相手も最初は「申し訳ないだけじゃ、わからないんだよ!」とか絡んできますが、お詫びの一点張りで通すと、言葉が枯渇して何もいえなくなり、空回りしだすのです。
そんな感じで地獄のような4時間を捌き切りました。いまではよい思い出です。もう二度と経験したくないけど。
会社がミスをして利用者に迷惑をかけてしまったことは、本当に申し訳ないことであり、決してクレームをいってくるお客さん達のことを軽視していたわけではありません。
しかしこちらも人間ですから、真に受けていたら精神が持ちません。相手の感情にのまれてしまうと、非常に辛くなってしまうので、心に鋼鉄の壁を作って冷静に対処するとよいですよ。
このノウハウが役に立つ日が一生こないことを心よりお祈り申し上げます(笑)