公開年月日:2016年07月19日
犯罪もクラウド化?分散した人脈を利用して大規模化する組織犯罪
例の18億円以上がATMなどから不正引き出しされた事件ですが、末端で関わった犯罪者達が次々と逮捕されつつあります。
そこからは中枢の大組織が末端の人達を巧妙に利用する姿が見え隠れします。
偽造カードで現金が引き出されただけなら、世間は「またか」と思っただけだろう。だが、全国のコンビニATMから一斉に引き出された総額が18億円以上ともなると、誰もが気にする事件である。今月、次々と逮捕されている現金を引き出した容疑者は20~30代の男性ばかり。『脱法ドラッグの罠』著者で若者の風俗文化に詳しいライターの森鷹久氏が、事件関係者を名乗る男の告白から見えたATM不正引き出し犯罪の系譜についてレポートする。
中枢が不特定多数を操る「クラウド型」組織犯罪
不正引き出しの事件は、まだ全容が明らかになっていませんが、複数の「出し子」に偽造クレジットカードを渡して多額のお金を引き出させていることが判明しています。
「出し子」と聞いてすぐにオレオレ詐欺のことが頭に浮かんだ人も多いのではないでしょうか。
当初は少人数で行われていたオレオレ詐欺も、次第に仕掛けが凝ったものとなり、警察役、息子役など役割を決めて犯罪者達が小芝居をうち、被害者を騙していくようになりました。
この犯罪組織の中で現金の引き出しを担うのが「出し子」です。引用元の記事によると、著者は不正引き出し事件において、オレオレ詐欺の人脈が使われていると推測し、その根拠を探るために関係者への取材を試みています。
18億円以上という不正引き出しの金額の大きさを考えると、この推論に真実味が感じられます。
今回のような大規模犯罪を1つの組織が行った場合、末端が逮捕されればすぐに母体が明らかになります。相当な人数が関わったと思われるこのような犯罪に対して、人を割り当てるのも容易ではないはずです。
しかし不特定多数の人達を使えば、このような大規模犯罪も実現可能で、中枢の存在も見えにくくなります。
ITの世界では欲しいときに必要なだけサービスを利用できる「クラウド」というものがありますが、この犯罪もまるでクラウドのようです。
軽い気持ちで足を踏み入れたら犯罪者になる
オレオレ詐欺の出し子などは、バイト感覚で手を染めてしまう人がいることが問題になっています。
依頼する側は当然ながら詐欺の片棒を担いでくれとは言いません。「集金代行」などという言葉でアルバイトを募集するのです。
よく考えればわかることですが、お金を誰かから受け取ったり、ATMから引き出したりするだけで、何万円ももらえるアルバイトに裏がないはずがありません。
軽い気持ちで受けた結果が、犯罪の一翼を担って前科一般ということになりかねません。逮捕されなかったとしても、依頼した犯罪組織から脅されて、また出し子として使われるなどということもあり得ます。犯罪組織側にとっては使い捨てできる都合のよい存在です。
今回の不正引き出し事件では、ニュースを聞いて怖くなったという理由で自首してきた人がいましたが、ときすでに遅しです。
「1,000万円を引き出してきたら、50万円もらえる」などというアルバイトに合法的なものはありません。甘言に注意しましょう。