クレジットカードの達人 >> ブログ >> 2016年10月、改正犯罪収益移転防止法が施行!クレジットカードを発行する前におさえておきたい2つのポイント【本人確認と実質的支配者】

公開年月日:2016年12月30日

2016年10月、改正犯罪収益移転防止法が施行!クレジットカードを発行する前におさえておきたい2つのポイント【本人確認と実質的支配者】

  法人カードと法律のテキスト

2016年(平成28年)10月1日、改正された犯罪収益移転防止法が施行されました。

犯罪収益移転防止法は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、犯罪による収益が移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えること、及び犯罪による収益の移転がその剝奪や被害の回復に充てることを困難にするものであることから、犯罪による収益の移転の防止を図り、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全 な発展に寄与することを目的として制定されたものです。

引用元:犯罪収益移転防止法の概要 – 犯罪収益移転防止法とは

犯罪収益移転防止法は反社会的勢力によるマネーロンダリングなど不法行為の防止を目的として、金融機関を中心とした「特定事業者」に対して様々な防止措置を講ずるように義務付ける法律です。ジェーシービーや三井住友カード、楽天カードといったクレジットカードを発行している会社も例外なく「特定事業者」であるため、カード業界も一定の影響を受ける法規制となります。

今回の改正によるカード業界へのおもな影響としては、クレジットカードの申込時の手続きが一部変更されたことです。このため、カード業界では「クレジットカードの申込みは面倒だな」と思われてしまわないかと懸念していました。しかし我々が調査した限りではこれからカードを申込む人が面倒と感じるような改正点は確認できませんでした

もちろん、改正された法律の内容を覚える必要もありません。改正点を何も知らなくても申込できますし、法律が改正されたことを知らなくてもまったく問題ありません。わからないことがあればカード会社の担当者が丁寧に教えてくれるでしょう。

これらの理由から、我々は法律改正に関する記事を掲載する必要はないと考えていました。しかし、ネット上では「顔写真がない書類だけではクレジットカードが作れなくなります。」など人々の不安を煽るような間違った情報やデマが紹介されています。皆さんの周りでデマを信じた人が「顔写真のない健康保険証じゃクレジットカードの申込できなくなったけど知ってた?」とさらにデマを広める事態も考えられます。

そこでこのページでは、改正犯罪収益移転防止法関連で間違った情報に惑わされないために、最低限覚えておきたいポイントを2つに絞って紹介します。もしも間違った情報をドヤ顔で話している友達がいたら優しく訂正してあげましょう。嘘を鵜呑みにしないためにもお役立てください。

覚えておいて損はない改正点 2つのポイント

1.【個人向け】本人確認が厳格化されるが「顔写真のない本人確認書類」のみの提示も引き続きOK

申込時に必ず行われる本人確認書類の提出

クレジットカードを作成する時には、本人であることを確認できる書類を提出しなければいけません。運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、健康保険証など、いわゆる「本人確認書類」の提出を求められるのは、クレジットカードを発行したことのある方ならご存じでしょう。

別人のふりをしてクレジットカードを発行する不正利用を防ぐため、 本人確認は、入会前に必ず行う手続きです。

対面方式による顔写真のない本人確認書類「のみ」での申込NGへ

今回の改正によって本人確認の際に提示してよい書類が一部変更されました。

取引方法における本人確認書類の違い

画像引用元:政府広報オンライン(2016年12月29日取得)

上の画像の赤枠の箇所が変更点になります。以前は個人がカードを発行するとき、店頭などでの対面取引の際、健康保険証や国民年金手帳など顔写真のない本人確認書類のみでも申込みを受付けていましたが、今回の改正にともなって、顔写真のない本人確認書類を提示するのみではカード発行ができなくなり、次の2つの方法のいずれかを選択しなければいけません。

  1. 本人確認書類に記載されている住所で転送不要郵便物等で取引文書を受け取る
  2. 別の本人確認書類を提示or提出する
★重要★インターネットや郵送での申込はいままでと変更なし

これを聞くと、運転免許証やパスポートのない人にとってクレジットカードの発行が面倒になると思いますよね?

しかしクレジットカード発行に限った話では、面倒になることなどほとんどなさそうです。さきほどの政府広報の画像をもう一度ご覧ください。

取引方法における本人確認書類の違い

画像引用元:政府広報オンライン(2016年12月29日取得)

変更点は赤字の箇所だけ、つまり対面取引の場合のみであって、インターネット経由や郵送でカードを申し込む非対面取引は今までどおり顔写真の有無を問わず本人確認書類またはその写しを送り、書類に書かれた住所に書類が届く方法で本人確認が完了します。

カード会社に本人確認方法を問い合わせたところ、三井住友カードやビューカードではこちらの方法で実施していることを確認しました。一方で、アメックスや楽天カードにおいては、本人確認書類は郵送せず、自宅に書類を届いた際に郵便局員(or佐川急便など配送会社のスタッフ)に本人が本人確認書類を提示することで本人確認をしています。このように、カード会社によって色々な確認方法が用意されています。

いずれも改正前から同じ方法で本人確認をしていて、これからも変更する予定はないとのこと。したがって、個人がインターネット経由でカード発行するなら本人確認の方法は今までと変わりません

有名なブログで「運転免許書がないとカード発行できなくなる」と紹介されていたため、ネット上では「面倒なことになるな」といった反応や「運転免許証を取らせようとする自動車業界や教習所の陰謀の可能性あり」といった面白いコメントまで見受けられましたが、ネット申込みは例外ですので、くれぐれもお間違いなきようご注意ください。

なぜこのような誤解をしてしまう人が多いのでしょうか?これは、政府広報のウェブサイトに下の画像が掲載されていたことが原因ではないかと考えています。

本人確認に必要な書類の違い

画像引用元:政府広報オンライン(2016年12月29日取得)

本文を細かく読まずにこの画像と見出しだけを見てしまうと、「健康保険証だけじゃダメなんだー」と思ってしまいますよね。

なぜこのような紛らわしい画像が掲載されているのか?これは対面方式で本人確認を行うことの多い銀行を対象とした説明となっているのだと思われます。改正犯罪収益移転防止法はクレジットカード会社だけでなく、銀行や保険会社といった金融機関にも対しても規制が義務付けられているのです。政府からすれば、金融機関といえば銀行であり、銀行を訪れる人に対しての説明をすることが当然だったのでしょう。一方で、インターネットでの申込(つまり非対面取引)が主流になりつつあるクレジットカード発行を念頭に置くと誤解を招きかねない説明画像になってしまったのではないでしょうか。

個人がインターネット経由でクレジットカードを申し込むなら、法律が改正されても特に今までとかわらないことを覚えておきましょう。(店頭申込の場合は注意しましょう)

2.【法人向け】会社確認が厳格化されるが審査の手順やスピードにほぼ影響なし

今回の改正におけるもうひとつのポイントとして、法人カードの申込において必ず確認される「実質的支配者」を特定するルールが変更されました。特定ルールは以前からありましたが、今回は以前よりも少し厳しくなりました。

「法人カードに入会する時に手続きが面倒になる」と思われている方もいらっしゃるようですが、実際のところ面倒になることはありません。今回の改正を気にして法人カードの申込を足踏みする必要はないでしょう。

法人カード申込時に確認必須の実質的支配者とは

「実質的支配者」は、金融業界や法曹界で働く人にとっては知ってて当然の用語ですが、多くの方にとっては聞きなれない言葉でいまいちピンときませんよね?

実質的支配者とは、その名の通り実質的にその会社を支配している人、支配しうることができるポジションにいる人のことです。

たとえば、株式会社であれば会社の株をたくさん持っている人は、社長や役員以上に大きな影響力を持っていると考えられます。上場企業の株を買い集めて大株主になって経営者に助言を行うことで「もの言う株主」として注目を集めた村上世彰率いる村上ファンドなどをイメージしていただければわかりやすいと思います。

また、株主でなくても、お金を融通してもらっている人や、師と仰ぐ人物がいる場合も経営に影響を与える人物として該当するケースもあります。

法人カードを申し込みの際にはこの実質的支配者を記入しなければなりません。カード会社は、この実質的支配者を含めた顧客情報を収集し、継続的に分析していくことで反社会的勢力等による不法行為を防ぐことに役立てていくそうです。

実質的支配者の定義は?

詳細を突き詰めて考えると難しいのですが、要点は簡単です。

※実質的支配者の定義がわからなくても審査課の方が親切に教えてくれます。知らなくても困ることはありません。興味のない方は読み飛ばしてください。

まず、会社の形態(株式会社、合同会社など)によって該当する実質的支配者の定義は変わります。

たとえば、株式会社における実質的支配者に該当するパターンは、おもに次の4つのパターンに分類されます。アメックスの公式サイトでわかりやすいフローチャートがありましたのでお借りしました。

会社形態別、実質的支配者一覧

画像引用元:実質的支配者の申告にあたって(2016年12月29日取得)


  1. 会社の株の50%以上を直接・間接的に保有している個人
  2. 会社の株の25%以上を直接・間接的に保有している個人
  3. 株主以外にも、出資、融資、取引その他関係を通じて経営に影響をもたらす権力者がいるか
  4. 代表権を持っている人

1から順番に該当者がいないかを確認していき、該当者が見つかった場合はそれ以降の記入は不要です。たとえば1の「会社の株の50%以上を直接・間接的に保有している個人」に該当する人が要た場合、2~4に該当者が要る場合も記入は不要です。1~3まで該当者がいない場合はその会社の代表者が実質的支配者とみなされます。

「株式を間接的に保有している」とは、たとえば下の図でA社の過半数の株式を保有する親会社であるB社の過半数の株式を持つCさんのことを指します。Cさんは「50%以上の株式を間接的に保有している個人」となるため、今回の改正によって実質的支配者に該当する可能性が高いです。

Cさん(実質的支配者)
↓ 60%の株式を保有
B社
↓ 60%の株式を保有
A社

このようなフローで実質的支配者を特定します。「実質的支配者に該当する人を記入してください」と書かれた用紙が配布されるので、該当する特定した人・会社の氏名or会社名、関係性(該当するパターン)、住所or所在地等を記入して返送します。

★重要★審査スピードは従来とほぼ同じ&申込時の書類が1枚増えるだけ

このように実質的支配者の特定ルールが新たに設定されましたが、クレジットカード発行においてはさほど大きな影響はなく、実質的支配者に関する記入の手間が増えた程度と考えて良いでしょう。(三井住友カードなどにおいては以前から実質的支配者に関する設問はありました)

ネット完結のクレジットカード発行に慣れている人にとっては必要事項を記入して郵送するとなるとひと手間増えたように感じるかもしれませんが、企業向けの法人カードにおいては従来から申込みの際に登記簿謄本等の書類の提出が必要になるため、申込みがネットで完結するカードはありません。そのため、実質的支配者に関する記入シートが1枚増えたとしても、登記簿謄本と一緒に郵送するだけで、今までと何も変わりません。

したがって、企業が法人カードを申込む際は、

  • 実質的支配者に関する情報を提出する必要がある
  • よくわからなくても丁寧に教えてくれるので過剰に不安視しない

この2つだけを覚えておけば完璧です。

★重要★個人事業主は実質的支配者の特定は不要

法人カードと聞くと法人しか持てないカードだと思われるかもしれませんが、仕事にかかる経費の支払(事業性決済)が目的ならば、個人事業主(自営業)でも利用できます。

個人事業主でも利用できるクレジットカードには次のようなものがあります。

そして、個人事業主がこれらの法人カードに申し込むケースにおいては、実質的支配者の特定の手続きは不要です。

この点は改正前から変更はありませんが、今回の改正において「法人カードは実質的支配者の特定が必要」というキーワードが独り歩きしてしまい、個人事業主もその対象に含まれると誤解されないかと、カード会社の方も懸念していると伺いました。個人事業主は対象にならないことを覚えておきましょう。

まとめ

長々と書いてしまいましたが、

  • 【個人向けカード】インターネット経由の申込なら顔写真なしの本人確認書類だけで申込みできる
  • 【法人向けカード】実質的支配者の特定を求められるが、わからなくても親切に教えてもらえるから気にしない。個人事業主は特定不要。

これだけ覚えておけば大丈夫でしょう。ネット上では色々な情報が飛び交っていますが、くれぐれもお間違いなきようご注意ください。

改正犯罪収益移転防止法の勉強になるサイト一覧

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